
再生医療関連のニュースをお届けします。
October 31, 2017
「iPS細胞の臨床応用とその問題点」
今年3月に、理化学研究所などの研究グループが神戸で、他人由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた世界初の移植手術を行い、世間の注目を集めました。
2006年に京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞されてから5年が経過した今、「万能細胞」と呼ばれるiPS細胞を用いた再生医療はどのような展開を迎えているのでしょうか?今回はMRとして知っておきたいiPS細胞の知識とiPS細胞技術を用いた創薬研究についてご紹介します。
まず初めにiPS細胞とは、人工的に多能性を誘導された幹細胞のことで、ヒトの皮膚など既に分化した体細胞に数種類の遺伝子を導入して培養することで分化前の状態に戻し、再度様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多分化能)とほぼ無限に増殖する能力(自己複製能)を持った細胞のことを指します。この細胞が持つ多分化能を応用することで、再生医療の進歩がめざましいものになると期待されています。
それでは、iPS細胞は具体的にどのような治療に活かされるのでしょうか?
現在、世界中でiPS細胞を用いた疾病治療の研究が行われています。その中でも山中教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA)では、製薬企業と提携することでより充実した研究体制を確立し、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィーなどの疾病のほか、がん免疫療法、遺伝性希少疾患、難治性筋疾患に対する治療薬開発の研究に着手しています。
2014年には世界初となる患者由来のiPS細胞を用いた加齢黄斑変性の手術が日本で行われました。術後の経過は良好であり、iPS細胞を用いた手術の安全性などを示す結果が得られています。
しかし一方で、問題点も多く見つかっています。今回はその中の2点を挙げます。
1) 他家移植の問題
患者自身の体細胞から作製されたiPS細胞を用いた手術(自家移植)は、免疫拒絶反応を起こす確率が極めて低く、他人由来のiPS細胞を用いる手術(他家移植)より安全性が高いですが、その分細胞培養に膨大な時間と費用がかかるといわれています。他家移植のためのiPS細胞ストックができれば、治療(移植)への準備期間を短縮することや費用削減につながると考えられます。これらの問題解決や、より迅速な医療・研究に向け、他家移植の安全性や効果を確認する治験などが現在行われています。
2) 法令違反の再生医療
2014年11月に「再生医療安全性確保法」が施行され、ヒト由来の細胞や組織移植などの「再生医療」を行う医療機関は、厚生労働省または地方厚生局に「再生医療等提供計画」を届け出ることが必要になりました。しかし実情として、法令を無視した治療行為が行われるケースも発生しています。正式な手続きを踏まなければ医療行為の安全性も確認できないため、治療を受ける患者が大きな危険にさらされる可能性も考えられます。生物学的な面だけでなく、このような法令遵守の徹底も問題の一つになっています。
iPS細胞や再生医療について、詳しくは下記のホームページでもご確認いただけます。
・京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/
・一般社団法人 日本再生医療学会
https://www.jsrm.jp/
執筆:日本CSO協会T.H.
October 31, 2017
臍帯血の民間バンク、2社の事業内容を公表 厚労省、4社が廃業・廃業予定
厚生労働省は1日までに、個人の臍帯血を保管する民間バンクの事業に関する届け出の状況をウェブサイトで公表した。民間バンク7社のうち、2社から届け出があった。4社が廃業・廃業予定で、1社が届け出を準備しているという。【新井哉】
経営破たんした民間バンクから臍帯血が流出し、再生医療提供計画の届け出を行わず、がん治療と称して再生医療が提供されていた事態を踏まえ、厚労省が民間バンクの実態を調査。利用希望者が民間バンクの業務などを確認できるように、臍帯血の引き渡しの実績などの情報をウェブサイトに掲載した。
それによると、公表済みの2社で4万件超の臍帯血を保管している。保管契約の期間が過ぎた臍帯血が2000件以上あるが、契約者の住所が分からず、廃棄できないケースが少なくない。
こうした臍帯血についても、厚労省は適正に管理・廃棄する必要があるとしており、臍帯血を預けている人に対し、保管契約の内容などに不明な点がある場合、契約を結んだ民間バンクに問い合わせるよう促している。
October 31, 2017
阪大、培養細胞を単層状態と3次元の塊状のあいだで制御できる高分子を開発
大阪大学(阪大)は10月30日、培養した細胞の集合状態を3次元の塊と2次元の単層状態とのあいだで自在に制御できるようにする新規高分子を開発したと発表した。
同成果は、大阪大学産業科学研究所 永井健治教授、東京工業大学生命理工学研究科 丸山厚教授、嶋田直彦助教、九州大学先導物質化学研究所 木戸秋悟教授らの研究グループによるもので、米国科学誌「ACS Applied Materials Interfaces」に掲載されている。
従来の典型的な細胞培養法では、細胞培養皿を用いた2次元的な平面培養法や、浮遊培養などを用いる3次元の塊状培養などが多用されるが、これらのあいだでの自在な転換技術は開発されていなかった。
同研究グループはこれまでに、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子を独自に開発しており、同高分子が生理的pHおよび塩濃度条件下において、加熱によって溶解し、冷却によって非溶解状態になる性質を持つことを明らかにしていた。
今回の研究では、ウレイド高分子を細胞培養培地に添加しておき、培養温度をコントロールすることで、培養細胞を単層培養状態から3次元の塊状の培養状態へと切り替えることに成功した。37℃の培養温度では、ウレイド高分子は培地中で溶解しており、培養細胞は一般的な単層培養状態を保つが、25℃にすると、ウレイド高分子は非溶解状態となり、単層培養状態から3次元の塊状へと形態変化する。温度を37℃にすることで、単層培養状態へと戻すことも可能だ。
同研究グループは、今回の成果について、培養細胞の形態と機能を可逆的に制御しうる新たな手法として、細胞生物学分野のほか再生医療分野への貢献が期待されると説明している。
エキサイトニュース
October 31, 2017
特殊なiPS細胞を他人に移植 5例の手術を終了
神戸市の理化学研究所などの研究グループは、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞を使って、重い目の病気の患者を治療する世界初の臨床研究を進めていて、1日までに、計画していた5例すべての手術を終えたと発表しました。この方法は、iPS細胞を使った再生医療のコストを大幅に下げることができると期待されており、グループでは1年間かけて有効性などを評価したいとしています。
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神戸市の理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーと、神戸市立医療センター中央市民病院などの研究チームは、京都大学が作った他人に移植しても拒絶反応を起こしにくい特殊なiPS細胞で網膜組織を作り、「加齢黄斑変性」という重い目の病気の患者に移植する、「他家移植」と呼ばれる世界初の臨床研究を行っています。
研究グループは、ことし3月から網膜の組織を注射する方法で臨床研究を開始し、神戸と大阪の2つの病院で1日までに当初の計画どおり5例の手術をすべて終えたということです。
iPS細胞を使った再生医療では、患者本人のiPS細胞を使う「自家移植」がありますが、「他家移植」が実現すると、コストを大幅に下げ、時間も短縮できるとされていることから、iPS細胞を使った再生医療の普及につながると期待されています。
グループでは今後1年間かけて経過や安全性などを調べることにしています。
NHK
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再生医療とは
生きた細胞を使ってケガや病気を治す医療の総称です。
公式にされている厚生労働省の資料では、「生きた細胞を組み込んだ機器等を患者の体内に移植等すること又は内在性幹細胞を細胞増殖分化因子により活性化/分化させることにより、損傷した臓器や組織の自己再生能力を活性化することで失われた機能を回復させる医療」と記載されています。
再生医療は、ヒト(動物の場合も含みます)の体内にある生命活動に欠かせない細胞、組織、器官、臓器等は、怪我や病気はたまた老化等、様々な要因で障害を受け、その結果として働きが低下(生体機能の低下)、もしくは失われてしまう(欠損)ことがあり、生命活動に必須な働きにおいて機能障害、機能不全を起こすことがあります。
こうして損傷してしまった組織、器官や臓器などを人的に再生して、失われてしまった本来備えられている機能を取り戻し、回復することを目的に、体外で培養、活性化、分化させた細胞等を、疾患が生じている患者さんの体内に投与、移植などを行う医療が再生医療といえます。
近年では、再生医療は、成長してた後に体の一部(組織や臓器等)に欠損や欠陥が生じた場合に、その障害を負った部位が再生することが出来ない、もしくは再生がとても困難な場合に、修復・機能回復させることを目指す医療とも表現されます。
再生医療と細胞治療の関係
再生医療は、 機能が損なわれた場所に必要な細胞を補う医療といえます。この細胞を用いて補う医療を総称して細胞治療と呼びます。細胞治療は、体内の細胞を一旦体外に取り出し、選別、分化、活性化、増幅などの加工(細胞培養を伴うものもあります)を行った後、患者さんの体内に移植、投与などを行い、疾患の主要因となっている機能を回復させることを目的とした治療方法です。
細胞治療は、再生医療と非常に同じような意味合いを持ちますが、「成分輸血」や「造血細胞移植」も細胞治療となりますので、言葉としては再生医療より広義な意味を持つとされます。
再生医療と法律の関係 2014年に再生医療に関する法律が施行されています。
2013年4月に再生医療の実用化を目指した再生医療推進基本法が議員立法として、通常国会で成立しました、その後同年11月には、再生医療等の安全性の確保等に関する法律、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律が成立、2014年に施行されました。この施行された再生医療等の安全性等の確保に関する法律によって、細胞治療のうち再生医療にかかわる治療は「再生医療等技術」(改正医薬品医療機器等法では「再生医療等製品」)として定義されました。これらは元来、細胞治療と呼ばれていた治療法と言えます。
再生医療等技術もしくは再生医療等製品に用いられる細胞らは、組織や臓器など、特有の機能を有した細胞ですが、加工を伴う場合は、材料となる細胞は多岐にわたります。メジャーな細胞ですと、骨髄細胞、臍帯血、脂肪細胞、皮膚、滑膜などがあげられます。近年話題の細胞としては、原料として入手が容易な皮膚や血球細胞などの体細胞に、特定の因子を少量だけ導入し、培養し増殖させた結果、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を有し、また、増殖することができる能力をもつ多能性幹細胞=人工多能性幹細胞いわゆるiPS細胞があり、このiPS細胞を用いた細胞治療/再生医療に注目が集まっています。
・ヒト、できれば本人の、神経や骨などを人工的に作り、組織や臓器を修復する治療法。米ウイスコンシン大学グループは1998年、ほとんどの細胞に分化できる胚性幹細胞(ES細胞)を開発して具体化した。2002年には、米ミネソタ大グループが骨髄幹細胞から同様の細胞を開発した。欧米や日本のグループが相次いで、両細胞から皮膚や神経、血管などを作ることに成功した。また、従来の技術による培養皮膚や血管、心筋などの再生も、実用レベルに達している。02年4月には、第1回日本再生医療学会も開催された。骨髄幹細胞から血管や皮膚の再生、人工材料を組み合わせた再生血管移植手術などの臨床応用も始まっている。
(田辺功 朝日新聞記者 / 2007年)
・病気やけがで損なわれた臓器や組織の働きを再生させるため、細胞や組織を体外で培養したり、加工したりして体に移植する医療。臨床研究や治験の段階のものが多い。
■再生医療のリスクによる分類(再生医療等の安全性の確保等に関する法律による)
第一種(高リスク) iPS細胞やES細胞などを使用/他人の細胞を移植
第二種(中リスク) 体の中にある自分の幹細胞を培養して利用
第三種(低リスク) 対象となる部位と同じ機能を持った自分の細胞を、培養せず治療に使う
(2015-12-03 朝日新聞 朝刊 科学1)
・さまざまな臓器、組織が欠損状態や機能障害や機能不全に陥った場合に、失われた機能を再生するために、細胞や組織を移植することが必要となります。 臓器や組織機能を再建する医療技術を総合して「再生医療」と呼んでおります。骨髄や臍帯血の中にごく僅かに存在する幹細胞を補充しようという試みなどが盛んにされております。
組織を移植する技術も広い意味では再生医療に入ります。組織工学と呼ばれる技術分野とも関連します。
(再生医療支援機構)
・生きた細胞を組み込んだ機器等を患者の体内に移植等すること又は内在性幹細胞を細胞増殖分化因子により活性化/分化させることにより、損傷した臓器や組織の自己再生能力を活性化することで失われた機能を回復させる医療(広義)。
患者の体外で人工的に培養した幹細胞等を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療。 患者の体外において幹細胞等から人工的に構築した組織を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療。